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∀(ターン・エー)ガンダム 地球光/月光蝶

上質な童話を読んでいるような感じの作品です。
何を信じればいいのか、どう生きればいいのか、どこへ向っていくべきなのか?このアニメーション作品は、そんな今の時代に「人が安心して生きていくために必要なことは何なのか?」を問いかけた物語のようにも思います。

∀ガンダム

「ガンダム」と名の付く作品は、たいていは人類が宇宙に進出するようになっても戦争を幾度となく繰り返す時代のお話ですが、この作品は、それよりもっとはるか未来のお話です。

舞台は、まるで19世紀の産業革命まっただ中の地球。人々は人類が昔、月に行った、ということを知らず、ましてや、月に移り住んだ人たちがいる、という事実が完全に忘れさられてしまった世界で物語は始まります。そこへ地球帰還を求めて月の軍隊が地球に降りてくる……というのが物語の基本設定。

物語の前半は月の軍隊の侵攻により“黒歴史”の遺物「∀ガンダム」が目覚め、月に行くための宇宙船を発掘、そして禁忌の土地で発見された核ミサイルの爆発による「夜明け」を主人公たちは体験します。そして物語後半は、発掘された宇宙船で月へ行き、そこに封じられていた“黒歴史”と∀ガンダムの秘密が明らかになり、ラストは地球と月に平和が戻って静かに終わります。

このガンダム作品は、1999年から2000年の全50話でテレビ放映され、2002年に物語前半の「地球光」、後半の「月光蝶」が劇場同時公開されました。10年たった今、あらためて見てみると、これは非常によくできた物語であると感心すると同時に、一体どう説明したらコレが伝わるのか、非常に悩むガンダム作品です。というのは、「ガンダム」という冠(ブランド・イメージ)がこの作品の欠点かな?とも思えたから。

2001年に起こった9.11アメリカ同時多発テロ以後の、今年発生した3.11の我が国で起こった震災と原発事故の後で視聴したせいもあるでしょうが、このガンダム作品は、普通の人々の生活に必要な、本来の「普通のこと」とは何なのか?をあらためて問いかける物語という印象を強く持ちました。

それは、人と物の関係であったり、文明や科学が発達することは必要なのか、便利になること、「前に進む」ことが当たり前とされているけれど、本当にそうでなければいけないのか?時には「後ろに進む」とか「足を止める」ことも良いのでは?という、あらたな未来像を提案する作品でもあったからです。

ちなみに、このガンダム作品の監督は富野由悠季。
この人の歴史(?)を考えると、ひょっとしたら、「人はそんなに(短い期間・歳月では)変われない」とか、たぶん、「人なんて(結局は)こんなもの」という、ある種の悟り(?)が反映されたから、あの傑出した「余韻あるラスト」へとつながったのかなーと。
∀ガンダムは、寓話としても秀逸な作品ですね。


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コメント

東日本大震災後に観るとたしかに印象は変わりますね。
富野ガンダムの中で一番作品として成熟している感じがします。

投稿: トリ | 2011/12/12 08:51

トリさん、こんちは!
「ガンダム」と名が付く作品は「繰り返し」の物語でもありますね。
成熟していると感じた理由は、ほかの「ガンダム」作品と比べて
「悩み」があまり見られないからですかねー。「迷い」がないというべきか(笑)。

投稿: 濱祐 | 2011/12/12 20:56

ロランやディアナ、グエン、ギンガナムも、
登場人物たちに「ブレ」がなく、苦悩が見られませんね。
悩む描写があっても、考える、考え込む感じで暗部がありません。
ゆえに「ドラマ」という感覚ではなく、「物語」や「本を読む」、
「(本を)読んだ」という感覚になるのかもしれないですね。

投稿: トリ | 2011/12/13 11:57

トリさん、こんちは!
たしかに今どき(?)よくありがちなドラマはないですねー。
暗部をさらけ出すとか、ドロドロの展開はなかったかも。
それゆえか、誰か一人のキャラクターに感情移入することは
なかったような?鳥観図(俯瞰・客観)的に物語が見られますから。
だから私、上質な童話を読んだみたいな感覚になったのでしょうね。

投稿: 濱祐 | 2011/12/14 09:07

ガンダム00と同じく、∀ガンダムも、
好き嫌いは分かれますが、私は好きですよ。
牛を胸のサイロに入れて運ぶガンダム、洗濯するガンダム、
そのあと、物干し竿としても使用されたことに衝撃。
前半の兵器というより「道具」という位置づけは凄かったです。
今放送していたら、もっと評価は違っていたと思います。

投稿: タマクマ | 2011/12/29 11:56

タマクマさん、こんちは!
あー、私のまわりにも、特にガンダム00は
「ガンダムと認めん!」という人、いるなぁ(笑)。

劇場版の「地球光」の中で、タマクマさんがおっしゃる
「道具」としてのガンダムのエピソードが盛り込まれなかったことは
非常に残念だったと思いますが、それがこのガンダム作品の
豊富なバックグラウンド&魅力ですねー。
本当に今、この時代に見たら、評価は違っていただろうと
私も思いますし、メッセージがよく響くんじゃないかなーと。

投稿: 濱祐 | 2012/01/01 15:17

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