« Market O リアルブラウニー | トップページ | 会津若松の七日町 »

ヱヴァンゲリヲン新劇場版

このアニメーション作品は、論理的な面白さよりも、まず第一に「共感」を呼ぶところが受けているんじゃないだろうか?しかもそれは、この作品を見る人の中にある、物語で語られる似たようなエピソードと経験、その時の気持ちや感情が「シンクロする」からなのかなーと。

新世紀エヴァンゲリオン

物語の主人公は14歳の少年である碇シンジ。長い間離れて暮らしていた父親・碇ゲンドウに呼び出され、第3新東京市を訪れるところから物語は始まります。その時に「使徒」と呼ばれる謎の敵が現れて、父のゲンドウは息子のシンジに対し、汎用人型決戦兵器「エヴァンゲリオン」に乗って「使徒」と戦えと命令。父が自分を呼んだ理由にショックを受け、一度は拒否する主人公ですが、自分が拒否をすれば怪我を負った少女(綾波レイ)が代わりに乗って戦うことになる現実を突き付けられ、主人公のシンジはエヴァンゲリオンに乗ることを決心します――。

……とまぁ、このあらすじだけを読むと、一見よくあるロボット物のお話かと思うでしょうが、物語が進むにつれて、これはそんな生易しい(?)話じゃなくて、ものすごく「生々しい」ものを作品に投影しつつ、「本編」の軸となる肝心なストーリーを展開させているなーと。この作品が面白いと感じるかどうかは、見る人の中にある「生々しさ」の質と量が関係するかもしれません。

ここでいう「生々しさ」というものは何かという、例えば子どもの頃に「(親に言われて)強制的に勉強させられた」経験であり、その時に自分自身はどう思っていたのか、結局は嫌々ながら勉強したとか、勉強する理由もわからずにさせられた、納得して勉強した、勉強することを拒否した、その結果ほめられた、あるいは怒られたなど、誰にでもあるであろう経験と心の動き。「エヴァンゲリオン」を見た人が、共感するか否かの別れ道は、この部分なんじゃないかなと。たぶん、「前向き」度が高く、「後ろ向き」になった経験が少ない人には共感は得られにくい作品でしょうね(笑)。

物語は主人公の碇シンジほか、綾波レイとアスカの3人のエヴァンゲリオンの少年少女のパイロットに、大人の女性であるミサトを加えた4人の人物を中心に話が進みます。それぞれの心に大きな傷を抱え、人とのコミュニケーションが苦手な主人公たちにとって、「なぜ使徒と戦うのか?」、「なぜエヴァに乗るのか?」という問いは、「人類を守るため」とか「敵だから」とか、そんな大義や表面的な話でなく、むしろ自分たちそれぞれの内面の問題として語られて、演出自体も心理描写に重点を置いています。

物語が進むにつれ、その世界設定が「死海文書」を基にした旧約聖書・新約聖書の世界をなぞったカルト色が濃いものであることを、この作品を見ている私たちに明らかにされます。物語の前半では自閉的だった4人の登場人物が、それぞれにコミュニケーションの回路を開いて「絆」で繋がっていくプロセスが描かれますが、後半はある時期からそれが急速に破壊され、凄惨な状況に追い込まれます。そして物語は最終的に自閉的だった登場人物たちを「救済」の方向へ――。

この「救済」の方法が物語の中に出てくる「人類補完計画」で、「エヴァンゲリオン」の名の由来である「Evangel (福音)」というわけです。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q

今年の秋(2012年11月)に公開される「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」は、2007年9月に公開された「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」と、2009年6月公開の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の続編です。それよりも昔にこの作品は、全26話のテレビアニメーション作品として1995年に、その2年後にはテレビアニメーション作品では描かれなかった第25話と26話のストーリーが劇場作品として公開されています。

あれ?これはただのシリーズ?それともリメイクされた映画作品?と疑問に思う方もいるでしょう。基本的にこれらの作品は、謎の敵「使徒」に対して、主人公たちが「エヴァ」に乗って、理由もわからずに戦う不条理な物語であることは変わりありません。が、新たな設定とストーリーで「リビルド(再構築)」したということもあって、新劇場版では、それ以前に語られた「エヴァ/シンジ」の物語とは随所に違いが見られます。別物であるともいえるし、続きともいえる。この物語の結末への過程が非常に楽しみです。大筋では変わらないものの、ラストは変わるかもしれませんね。


|

« Market O リアルブラウニー | トップページ | 会津若松の七日町 »

映画・テレビ・舞台・アニメ」カテゴリの記事

コメント

破であれだけ「行け!」とシンジに言っていたのに、
Qでは「何もしないで!」というミサト、あんまり過ぎる~

Qは予想の斜め右上をはるかに超える展開でポカーンでしたw
謎が解明されることも、誰も状況を説明するキャラもいない。
観る者を置いてけぼりで話が進むのは、まさにエヴァですなwww

カヲルだけTV&旧劇場版の記憶が引き継がれているのかしらんが、
またひとりで「…そういうことか!」で気付いたところで
退場の展開は、またか!という感じですな。
(若干ネタバレな話ですまんがwww)

投稿: トリ | 2012/11/21 20:01

トリさん、こんちは!
予想の「斜め右上」という表現は今の人の流行(?)なんですかね~(笑)。
(褒め言葉なのか、的外れとか、貶しているのかよくわからんwww)

ヱヴァンゲリオン新劇場版:Qは、そのまま1つの映画作品として、
「ふーん」とか「ふむふむ」という感じで、ワンシーンごと、
セリフの1つずつ考えながら観てましたねー。
今までのエヴァンゲリオンの「リメイク」ではない「リビルド」感が
強く出ていて、私的にはとても面白かったです。
(物語や設定の整合性を気にする人にはどうだろ~?)

記憶が引き継がれている設定なのかは存じませんが、
カヲル君はたぶん、あのような役割のキャラなんでしょうね。
文学とか演劇向きのキャラって気がします。
世界を天使のように俯瞰してますしね
(物語の中では数少ない説明してくれるキャラだしw)

投稿: 濱祐 | 2012/11/22 07:22

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Qを観ましたが、
いきなり14年後にぶっ飛ぶとは、いやはやなんとも(汗)。
初号機を主機(メインエンジン)にした巨大戦艦が登場で、
しかもナディアのノーチラス号のBGMって(笑)

あの戦艦に乗ってたミサトやリツコをはじめとしたクルーは、
サードインパクトを起こしたシンジを恨んでいる展開に、
前作までの序や破の態度からの変わりようは、
ひどすぎるとは思ったが、A級戦犯ものなので仕方なしか。
綾波を助けるためとはいえ、結果は大虐殺みたいなものだろうと。

14年経ってもアスカは面倒臭いツンデレ、カヲルはホモ(違)と
キャラ設定は変わってないが、あのマリの存在はとても不気味。
(ゲンドウと冬月は相変わらずだがwww)

人間ドラマとしては今回は密度が低いように感じたのだが、
庵野監督はQでは何をしたかったのかわからん。
序と破がよかっただけに、おしい気がする。

投稿: Kent | 2012/11/24 01:22

Kentさん、こんちは!
なるほど、あのBGMはノーチラス号でしたか(笑)。
もともとMark.9での運用を想定されていたようなので、
エヴァであれば、理屈的には何でもOKなんですかねー?

シンジ君は「戦犯」扱いで憎まれているというより、
ただ「巻き込まれるのは困る」とか、先のサードインパクトで
「滅茶苦茶にされた怒り」の態度なんじゃないですかね。
(特に新キャラのピンク髪のギャルあたりは露骨でしたが)

その中でもミサトやリツコ、ネルフ本部(指令室)の元クルーらは
ちょっと違う感情かもしれませんね。(責任を感じているでしょうし)
きっとアスカもそうでしょう。(←これは愛憎だろうなぁ)

Qの劇中はみんなシンジ君に冷たい態度を取っていますが、
詰まるところ、みんなシンジ君を「エヴァに乗せたくない」のでしょうね。

今は初号機の中にいる綾波レイ(ぽか波)もそうでしょう。
「碇君がもうエヴァに乗らなくてもいいようにする」と言って、
第10使徒に零号機で大きなミサイルを抱えて突撃しましたし。
シンジ君の母親の、初号機の中の綾波ユイも同じ気持ちでしょうね。
(実はみなから愛されているシンジ君。そのことに彼自身は気付かない…)

ゲンドウと冬月先生、あとカヲル君は役回りが安定してますね(笑)。
人間ドラマとして密度が低く感じた理由は、
劇中で誰も(そういう思いを)説明してくれないからじゃないですかねー?
(カヲル君が説明したのは世界だけですし)

ところで新劇場版の作品は、劇中に挟まれる英語のアイキャッチ
(サブタイトル)を見ると、各作品のテーマというか、
表現したいもの、見せたいものが理解しやすくなると思うので、
作品観賞の助けになるんじゃないかなーと。
(いわゆるエヴァ的な謎、世界や現象の設定はわからんけど)

ちなみに、新劇場版の各英語サブタイトルは以下の通り。

●「序」の英語サブタイトル
YOU ARE (NOT) ALONE(君は孤独/孤独じゃない)

●「破」の英語サブタイトル
YOU CAN (NOT) ADVANCE(君は変われる/変われない)

●「Q」の英語サブタイトル
YOU CAN (NOT) REDO(君はやり直せる/やり直せない)

劇中に挿入されるこのアイキャッチが読めていれば、
あーなるほど!って感じになるんじゃないかなー。
(まぁ、私は映画観賞中はわからなかったクチですがwww)

投稿: 濱祐 | 2012/11/24 09:05

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ヱヴァンゲリヲン新劇場版:

« Market O リアルブラウニー | トップページ | 会津若松の七日町 »