009 RE:CYBORG
宮城県の石巻市に滞在中、ちょうど動画サイトGyaO!(ギャオ!)で無料公開していたものを視聴することができました。(この日の早朝は緊急地震速報と津波警報発令で、ちょっといろいろ大変ではありましたが~)
――「彼の声」に従って人類をやり直さなければならない――2013年、世界の超高層ビルを次々と狙う同時多発テロが発生。その「姿なき敵」と戦うため、再結集するゼロゼロナンバーのサイボーグ戦士たち。事件真相の鍵となる「天使の化石」と「謎の少女」、そして「彼の声」とは一体何かのか――。
サイボーグ009(ゼロゼロナイン)は、石ノ森章太郎のマンガが原作。筆者は昭和と平成のカラーアニメーション作品と劇場版の超銀河伝説くらいしか見ておらず、マンガ原作は全然知らないのだけれど、これらシリーズ作品に共通するテーマは、おそらく「正義」と「悪」で、これを哲学的に問いかけるのが「サイボーグ009」なのかなーと。あと、私的には結構「反戦色」が濃いイメージの作品ではありますね。
009 RE:CYBORGは、これを現代版にして再構築したサイボーグ009の劇場版作品で、9.11アメリカ同時多発テロ以降の世界が舞台です。軍産複合体の「死の商人」よりも根源的な悪との対峙が描かれています。この悪とは、現代社会に巣くう退廃や、終末論思想といった、なんとなく「そういう方向」とでも言い表せばよいでしょうか? 3.11東日本大震災の後だから、これは余計に感じるところかも?ではありますが。
サイボーグ009シリーズ作品に共通するモチーフに「正義」と「悪」のほかに、「神」と呼ばれるものの存在もあると思うのだけど、これは聖書の世界などに出てくる(教条的で単純な)善と悪の「神」ではなく、どちらかというと北欧神話に出てくるような「秩序と混乱」の対立で、絶対的な「神」ではないものとして描かれているように思います。
そういえば、サイボーグ009の昭和のテレビアニメ版では「オーディン」とか「宇宙樹(世界樹/ユグドラシル)」など北欧神話の中に出てくる名称や世界観の話もありました。 009 RE:CYBORGは、「滅びの予言」に他人を巻き込みがら物語が進む北欧神話により近い作品なのかもなぁ。
009 RE:CYBORGの「彼の声」は、北欧神話でいうところの、自身の道徳性の堕落に伴う、自己正当化と自己矛盾、さらには罪悪感に基づく自虐性によって、最終的にはラグナロク(最終戦争)を起こすようなもの。今までのサイボーグ009シリーズだと、ブラックゴーストのような(わかりやすい)悪意が敵だったのだけど、現代はなにか(わかりにくい)空気のような意識が敵みたいな。(これは私もヒシヒシ感じるところだったりしますけど)
でも、009 RE:CYBORGは物語の最後のほうから結末への展開は、北欧神話とは違っていて、主人公のサイボーグ戦士たちが、人として自らの運命を切り開く姿が描かれています。これはまぁ、サイボーグ009シリーズ作品のすべてに当てはまる「お約束事」ではありますが(笑)、これが原作者・石ノ森章太郎の答えなのでしょう。
009 RE:CYBORGのラストの世界で、物語前半で消えた007と008、最後に地球へ落ちた002が一緒の場所で、ギルモア博士らと言葉を交わしているところを見ると、三途の川は渡らずに済んだのかな?と期待しています。
サイボーグ009は「悪は人の心の中にあって、人がいる限り、これを滅ぼす事はできない」という結論が必ずあるけれど、これに「抗う」ことも決して捨てない作品です。
009 RE:CYBORGでは、「彼の声」に対してどう答えるか?という話でもあります。同じ「彼の声」を聞いた人たちが自爆テロなどを実行したことと、主人公らが実行したことは、実は手法として「自らを犠牲にする」というのは一緒なのだけど、解釈によってやったこと(効果)が違うというのは、まさに「ボタンのかけちがい」そのものだよなーと思いましたね。
現実の世界はそれがすべて、表裏一体であるということも、原作者やこの映画作品を作った人たちが辿りついた真理ということかもしれませんね。
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