「基準値のからくり」と「誤解だらけの電力問題」
今月購入した本が、自分としてはなかなかのヒットだったので、ちょっとご紹介しておきます。特に読書好きってわけじゃないのだけれど、今年は例年になく読書年ですな(笑)。
仕事柄、リスクというものは「(ある程度)許容する」ことが意識としてインプットされている私としては、その目安となる基準値がどのようにして決められたのか?ということには興味津々です。
書籍のタイトルが「基準値のからくり」となっているので、一見すると、ちょっと怪しい暴露本とか都市伝説(?)みたいな、普段は決して手に取らない(私自身の基準として)敬遠・警戒するタイプの本(というかタイトル)だけど、中身をパラパラめくってみると、意外とそうでもなかったので購入を決めました。
基準値というのは、(想定された)安全と役割を担保する目安です。リスクの話をすると、よく「有無」であったり「ゼロ」なのかどうか?ということをよく聞かれたりするのだけれど、白黒がはっきりするようなことはなく、ほとんどが濃淡あるグレーなんですよね。多くの基準値は、すべてのリスクがゼロになることを保証してはおりません。
調査や実験などの科学的データのほか、社会や経済の利益と便益性、対策の実現可能性、人の生活習慣や文化、価値観なども考慮して決定されるのが基準値です。その根拠を知ることは、世の中の意思決定(政治)の仕組みを知ることでもありますから、この本はなかなかの良書ではなかろうか?と思っております。(まだ読み終わってないけどw)
日本のエネルギー問題、特に電力を考える上では、この本はとても有力なのではなかろうか? 書いてあることは実にオーソドックスなだけに、この本の内容に反論することは非常に難しい。まさに王道。電力を真正面に捉えた1冊です。
こういった本の購入を考える場合、書評などを読んで、1つの参考にすることはあります。Amazonのレビューの中に、この本は「原発擁護論」などと書く人がおられますが、先の「基準値のからくり」のところで述べた、「リスク(あるいは安全)の有無」で思考して判断するタイプの人には、受け入れにくい内容の本かもしれない。この本は、そういう反論に対して明解に答えることはありませんが、黙して語らず、語ろうとしないところに、電力問題の本質があるのでは?と、私は途中まで読んでみて思いましたね。(この本もまだ読み終わっておりませぬw)
私は総じて再生可能エネルギーの技術は好きなのだけど、今の日本中で進む普及状態には好ましいといえる感情は持っておらず、またこのままの状態で進行してしまうと、安定的な電力の供給に支障が出るのでは?と危惧を抱く1人です。ドイツのように脱原発、再生可能エネルギー化を進めるが、「あれも嫌、これも嫌という甘えは許されない」と国民に覚悟を求めていない日本ですからね。
誤解だらけの電力問題という本は、エネルギーに関する神話、エネルギーに関する基本、電力システムの今後が語られています。中でもおもしろいのが「(補論の)電力システムと電力会社の体質論」です。
新聞などで「経済性と安全性と比べるな」という主張がよく展開され、ごもっとも、と思うところもあるけれど、実際には経済で命が失われていることもありますし、むしろ、そっちの方が多いのでは?と私は考えています。最初から結論ありきではなく、「ゼロリスクは無い」という事実を踏まえて考えてほしいと思うんですよね。それこそ、リスクあるものをすべて拒絶していたら、少なくとも日本で暮らすことは諦めなければいけないですし(笑)。そういう主張には大局観が全然感じられませんからね。この問題を通して、それも養えるかもしれない1冊だと私は思いました。
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