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小川仁志「自由の国 平等の国」

この小説に出てくる「自由の国」と「平等の国」の対比は、かつて視聴したOVAの「銀河英雄伝説」を思い出します。比較対照するテーマは違いますけれど、それをお子様版にした感じで、とてもわかりやすく著者の思考を小説にまとめた本ですね。

自由の国 平等の国

ここでは「著者の思考」と書きましたけど、これはなにも、著者にしか出来ないような思考というわけではありません。こういうことは結構みなさん、普通に考えたことがあるんじゃないでしょうか?

物語のあらすじは、こちらの特設サイトをご覧いただくとして、大筋の話としては誰でも思い付くような構造の物語で普遍的。ゆえにシンプルなのではありますが、これに余計なものを肉付けせず、本当に素のそのままで、よくぞここまで書き抜いた作品だなーと感心しています。学校教育の教科書とか読書感想文には打ってつけの小説です。

物語は「自由の国」の主人公の少女から動き出しますが、これはもう1人の主人公である「平等の国」に属している少女からは起こらない心の動き・アクションだよね。極端な「自由」と「平等」を掲げる両国の対比を、今まで具体的に考えたことがない人にとっては、この本は、いろいろな発見があって楽しいんじゃないかと思います。「自由の国」と「平等の国」それぞれの発想だと、突き詰めるとそうだよね~という感じで(笑)。

「自由の国 平等の国」という本は、物事を深く考えられる子ども・お子さんに育てたいと願う大人の方にはおすすめの一冊です。というのは、最近の世界情勢に通じるテーマでもあるからなんですよね。中東イラク・シリアのイスラム教スンニ派の過激派組織(いわゆるイスラム国)の登場や、香港で発生した学生による民主派デモ(傘革命)なども、この本に描かれている「理想の国」のあり方を追求する動きと同じといえるでしょう。

ただ、この小説の中で私がひとつ気がかりなことは、その「理想の国」の追求の物語に「カクメイ(革命)」という単語が出てくることです。今の日本で起こっている様々な(マスコミが煽る)二項対立のことを想像すると、この本に描かれる「カクメイ」になりそうもない絶望を感じます。例えば、今のままの「反原発」や「9条を守れ」的なノリの運動には、この本の「カクメイ」は望めないなーと思うわけです。

「自由の国 平等の国」の著者は「革命を実現しようじゃないか」とメッセージを出していますけど、これはあくまで「創造が目的の革命ならばよい」という話。破壊したいだけの革命は、御免被りたいと私も思います。

というわけで大人の方には、本編の小説をお読みになったあとの、著者による「解説」部分の方が面白いと感じるかも?とも思った本でしたね。


自由の国 平等の国
自由の国 平等の国
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小川仁志
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