『ベルサイユのばら』で読み解くフランス革命
「人は権利において、生まれながらにして自由かつ平等である」という言葉。これはフランス人権宣言で採択されたものです。「ベルサイユのばら」主人公のオスカルも「自由であるべきは心のみにあらず」と語ります。これらの言葉は多くの西洋の民主主義国家において模範的に取り入れられていることであると私は認識しています。
池田理代子による著書『ベルサイユのばら』で読み解くフランス革命。「ベルサイユのばら」は、史実とフィクションが入り混じった少女マンガの名作です。この本は原作の少女マンガを読んでいてもいなくても、「フランス」や「ベルばら」など、どこかに引っかかる部分がある人なら、誰でも楽しめる本ではないかと思います。
2015年1月にフランス、特にパリで起こった「私はシャルリ」と大勢の人が訴える出来事がありました。その中で、「私はシャルリと同じく、フランス革命精神を持っているのだ」という主張・言葉がニュースに流れ、ふと、「かつてのフランス革命や人権宣言での理念や理想が、はたして本当にこの訴えにはあるのか?」というような疑問を私は抱きました。端的に言ってしまえば、フランス革命の悪い部分が「私はシャルリ」に表れているよね、というのが私の率直な評価だったのです。
実は私がこの本を手に取った一番大きな要因は、自身の「フランス革命に対する評価を見直しておきたい」という欲求でした。「私はシャルリ」は1年以上前の出来事でしたが、ずっと今まで引っかかっていたのです。
さて、本の紹介話に戻りますが、その時代を生きた人の実像をありありと描く「ベルサイユのばら」は、人間の情緒や、当時のフランス社会の多面性など、学校教育における世界史の教科書を一見しただけでは読み取れない歴史の一面を、私たちに多く見せてくれる良書です。
そしてこの本、「『ベルサイユのばら』で読み解くフランス革命」は、その良書を通してのフランス革命に至るまでの歴史・出来事を、「ベルサイユのばら」の作者自身の語りにより、とても丁寧に解説しています。
原作者自身が解説書を出すというのは、よく考えると非常にめずらしいような気もしますけど、原作マンガの解説書というよりは、きちんと(原作「ベルサイユのばら」を通して)フランス革命に至るまでの解説書になっているあたりが絶妙なところです。
7月12日の今日はフランス革命記念日。その2日後の7月14日は絶対王政による専制政治の象徴であったバスティーユ監獄が革命に加わった市民たちに攻め落とされ、「ベルサイユのばら」では主人公のオスカルがここで倒れます。そしてバスティーユ監獄を落とした勢いをもって、冒頭のフランス人権宣言が採択。7月14日はフランス国民の祝日になっています。
フランス革命を経た今のフランス国家と市民、また、「ベルサイユのばら」主人公オスカルの命題である「自由・平等・友愛」とは何かを、国や地域は違えど、日本で暮らす現代の私たちが今一度考えさせられる、よい機会の本にもなっていると思います。
「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」という有名な言葉、マリーアントワネットが発言したと、中学だか高校の授業で先生から私は習った記憶がありますけれど、これについても本書では触れられています。(今の学校教育でも、そう習っているのかな?と、ちょっと気になってたり…) フランス革命は「市民による革命」であることには違いないのでしょうけれど、その構図、構成要件と動機は果たしてどうなのか。
フランス革命に対する評価が低い理由、このあたりが私にも大きいようです。
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