
和歌山県太地町のイルカ漁を批判するアメリカの映画「ザ・コーヴ」を那須塩原で観た。この映画をめぐって日本では、「反日映画だ」などとして上映中止を求める抗議活動が全国各地に起こり、実際に上映を取りやめる映画館もあった。
追い込み漁によって映画タイトルである“コーヴ(入り江)”に閉じ込められるイルカの群れ。そのうちの何匹かは世界中の水族館などに売られ、残りのイルカは槍で突き刺され、入り江が真っ赤に染まる──それを暴くための映画だった。
正直な感想として、これは「うまくない映画だな…」と思った。なぜなら結論ありきの映画だからだ。特にそれを感じさせるのが、食用で売られているイルカ肉に含まれる水銀値が高いことを訴える場面。理由が後付けである感が否めない。
これを観た日本人のほとんどは、映画制作側の全面的な支持者には成りえないだろうし、はじめからイルカやクジラ漁に反対する人しか共感できない。
この映画を観て、いくつか収穫もあった。
まず、少なくとも映画制作側にとってイルカは「魚ではない」こと。彼らにとっては「イルカ漁」ではなく「イルカ猟」なのだ。それから彼らは、私たちと同じ「人間」のような感覚でイルカを捉えているのだと思う。彼らとそれを支持する人たちの中には「日本のイルカ猟は非人道的だ」とまで言っているかもしれない。(←ひょっとしたら映画の中で言っていたかも?)
それから、この映画が最も訴えたいことは「イルカを食べることがいけない」ということではない。本当は「日本は野生動物の滅亡や虐待、虐殺に無関心な国である」ということなのだろうと思う。「訴えたい」というよりは、「レッテルを貼りたい」に近い感情。だけどそれが非常に伝わりにくい映画作品になっている。日本のイルカ漁やクジラ漁に対する説明(認識)が不足している。一方的な視点で描かれており、違和感を覚える人はきっと少なくはないだろう。
1960年代のアメリカの人気テレビ番組「わんぱくフリッパー」で調教師兼俳優として活躍したリック・オバリー氏の「イルカへの愛情」はひしひし伝わるし、イルカと一緒に波乗りして、サメに襲われるところをイルカに助けられたサーファーや、イルカやクジラと一緒に泳いだフリーダイバーらの体験に基づく「殺さないで」は理解できるし、それは許せるなと思った。それこそ、リック・オバリー氏のイルカへの愛情と情熱的な献身(イルカ解放活動)のドラマだったら感動はしたかもしれない。彼は純粋にイルカを愛している。それは映画の中でよくわかった。
私が思う最大の問題は、映画の中にも出演者として登場する監督のルイ・シホヨス氏をはじめとする映画制作側(OPS)に愛が感じられないことだった。これは映画編集の問題かもしれない。シホヨス監督が入り江の秘密を暴くために、選り抜きのスペシャリストを招集してチームを作り、盗撮ミッションを遂行する過程を少なくとも映画の中に3分の1強は入れたことがその原因のような気がする。ただ「暴きたかっただけ」、「力を示したかっただけ」のような印象を持ってしまったことが残念だ。
映画を観た帰り道、ずっと車の中で考えたことがある。
それは映画の中で出てくる「日本の文化」という言葉。リック・オバリー氏のいう「(日本人なのに)誰も知らないイルカ漁を日本の文化といえるのだろうか?」という言葉と、漁師のいう「(昔からやっている)イルカ漁は日本の文化」という言葉。
私の認識では、あくまでも「ローカルな文化」なので、これを「日本の(共通の)文化」というニュアンス(?)で、ひとくくりにされてしまうことに疑問符が。私的に、なんだかしっくりこないのでありました。
(※ケンミンショー的なご当地グルメとか風習とそれは同じで)
※別の見方・考え方として、とても参考になる感想がありました。なるほど…と思いましたので、こちらも参照されることをおすすめいたします。
■The Coveの感想:これはやばい
http://katukawa.com/?p=3667
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